審美歯科 前歯も白い歯 編

審美歯科材料  審美基準 使い分け ブリッジとインプラント 審美歯科治療例


審美歯科テクニックの使い分け

 まず、審美歯科テクニックと材料をどのように駆使して、治療するのが一番良いのか、記していきましょう。

 前のページにも記したように、前歯の形や色は様々です。  その人その人の個性の表現でもあります。
その人の個性を活かしながら、より審美的な個性の表現としての 『 キレイな白い歯 』 が、審美歯科 の目的です。


 前歯だけを見て審美歯科治療をしては、十分にキレイに出来ないこともあります。 顔全体を見てその中でバランスを保ち、魅力をより惹き立てる事のできるように、とアプローチすることが大切です。  ですから、全体の中でのバランスということになると、戦略的にあえて抜歯をすることも必要かも知れませんし、部分矯正治療で歯のポジションを整えることが必要であったり、歯周形成外科治療で歯と歯肉のバランスを取ることも必要かもしれません。

 また、審美歯科治療を行う時の材料については、セラミックハイブリッドセラミックコンポジットレジン、の3種類の材料があります。 それぞれの機械的特性については前項に記したとおりです。
 万能に近い材料はありますが、短所の無い材料はありません。 審美材料の長所を可能な限り引き出し、短所を可及的にカバーすることがポイントではないでしょうか。

審美歯科材料の長所&短所 

ホワイトニング

 歯が黄色いから白い歯にしたい! という場合、その歯が天然歯であればホワイトニングが第一選択です。
歯を一切削らずにダメージを与えることなく歯を白くできるわけですから、ホワイトニングでOKであれば、それ以上の処置は必要ありません。

 ただし、作り物の部分(詰め物であるとか、さし歯であるとか)が白くなることはありません。  そういう歯については、ホワイトニング後に白くなった歯に合わせて詰め直したり、作り直したり、することになります。
ホワイトニングによりどのぐらい白い歯になるかは、こちらでコントロールできるものではありませんので、セラミッククラウンをセットした後にホワイトニングをしたい。。。とかは歯の色が合わなくなる恐れがあります。  必ず、事前に行うことが大事です。

     ⇒ 『 ホワイトニングの実際 』 を参照してください。

セラミック

 セラミックは、審美歯科領域においてほぼ万能な材料でしょう。  十分な強度があり、化学的にも非常に安定しているので、最初の審美的な状態を長く確実に維持できるというのが最大の長所です。

 一方、脆いという性質をカバーして十分な強度を持たせる為に、そして歯の色を再現する為に、どうしてもある程度の厚みが必要です。
これが何を意味するか?と言うと、
  原則として象牙質まで削らなければいけないし、場合によっては歯の中の神経を取ら無くてはいけないこともある、ということです。
最小限の侵襲という考え方からは、外れることが多いと言わざるを得ません。 (もちろんラミネートベニアのような例外もあります。)
 また、セラミックで歯を再現する製作技術は、非常に難易度が高く、熟練を要します。  技術的にもとても高度なテクニックなので、高い費用がかかります。

     ⇒ 『 審美歯科 セラミック編 』 を参照してください。  

コンポジットレジン

 コンポジットレジンは、審美歯科領域においてとてもお手軽な材料です。  必要最小限の範囲だけ削って除去して、そこに充填して・形を整え・磨いたら終わり。。。という、
   まさに、最小限の侵襲(ダメージ)で治してキレイな白い歯にする!という考え方を具現化したものとでも言えるでしょう。
もちろん、治療回数は1回で終わり。
材料代も他の審美材料と比べて、とても安い物です。  テクニックとして決して簡単ではありませんが、セラミックほどの熟練は要りません。 (まあ、セラミックもコンポジットレジンも、術者としてセンスがいる気はしますが・・・)  よくあるのは、歯の間から小さい虫歯になってしまった・・・、とか歯の根元が小さい虫歯になってしまった、というケースですね。

 一方、長い目で見るとき、審美的には変色という変化が避けられません。 (審美歯科、という観点に立つ時、ちょっと辛いものがあります。)
虫歯になってなくても、材料自体の変色により見た目的に問題となり、詰め替えをしなくてはいけないということがよく起きます。  (ですから、可及的に歯の裏側から虫歯の処置を行い、歯の表側に見える範囲ができるだけ小さくなるようにします。)
また、詰め替えるたびに、ある程度自分自身の歯を削らざるを得ないので、だんだん詰め物の範囲が大きくなってしまう・・・、という事態が起きてきます。  白い歯といっても一色の白ではありません。 色々な白色が混じってできた白色です。 詰め物が小さい間は他の白色にまぎれて目立ちませんが、詰め物が大きくなるにつれてどれだけ色を合わせても、その部分は他との違いが目立ってくるのです。

     ⇒ 『 審美歯科 コンポジットレジン編 』 を参照してください。

ハイブリッドセラミック

 上記の両者の中間、と考えれば良いでしょう。
臨床的には十分な強度があり、テクニック的にセラミックほどの熟練は要らず、材料代もかなり安く上がるので、以前はセラミッククラウンの代わりによく用いられていました。
しかし、審美的にはコンポジットの特性が強く、透明感はあまり無く、時間の経過により最初の歯の艶・輝きが失われやすいので、前歯に使うというより、奥歯向きの材料でしょう。  最近は前歯にはあまり使われなくなってきたように思います。

私ならどう使い分ける?

 審美歯科治療において、術者側にも、患者側にも、いろいろな考え方があり、これが100%の正解! というものは無いだろうと思います。
しかし、セラミックであれば良いだろう的なただ白い歯のような物体という治療結果、高いお金を払ったのに、白いけど見た目が全然自然じゃない・・・という審美(?)治療結果を今までに幾つも見てきました。
審美歯科治療をする以上、前歯だろうが奥歯だろうが、見た目が自然な白い歯に仕上がらなければいけないことは当然のことです!

 特に前歯の場合は、より高い審美性とその永続性が求められます。 (奥歯は審美性が永続しなくても良い、という意味ではありませんよ。)
場合によっては、歯へのダメージを犠牲にしてでも、審美性を優先しなくてはいけないことだってあります。
最初に述べたように、審美歯科治療では、顔全体を見てその中でバランスを保ち、魅力をより惹き立てる事のできるように、とアプローチすることが大切です。  そのためには現状の歯並びという枠組みを崩して換えることが必要なこともあります。

     ⇒ 『 クイック矯正 』 を参照してください。

 私は、
1.できるだけ歯に優しい(必要最小限の削りやダメージで済ませられる)こと
2.できるだけお財布に優しい(治療費が可及的に安い)こと
 という立場から、審美歯科治療の流れを考えます。
 その上で、
3.優先順位を付けてもらい、より気になる所から治すこと
4.より長持ちさせられるような環境を作り・維持すること
 を考え、
できるだけ小さいダメージで、できるだけ少ない費用で、できるだけ最大限の効果が得られる! 作戦を考えています。

1.できるだけ歯に優しい(必要最小限の削りやダメージで済ませられる)こと
2.できるだけお財布に優しい(下級的に治療費が安い)こと

 前歯を白くしたい!という場合、第1選択はホワイトニング や コンポジットレジン充填、第2選択はラミネートベニアクラウン、最後がセラミッククラウン、となります。

いわゆる小さな虫歯や変色、詰め物であれば、通常、コンポジットレジン充填という治療法でかなりの範囲までキレイな白い歯に出来ます。  費用(金額)的にも安くつくし、歯を削る量は少ないし、安いくても見た目はバッチリ!だし、個人的にはこんな良い治療法は他には無いと思っています。  ただ、審美的な問題で、その治療範囲や審美的な永続性を考え合わせる時にどうしても限界があります。
 そこで出てくるのが、セラミック・ラミネートベニアクラウン です。
歯の表面を約0.5mm程度しか削らないので、処置時に麻酔が要らないほどです。  即ち、基本的には削ってもまだその表面はエナメル質なので虫歯にも強い部分ですよ、ということで治療を進められるので、歯へのダメージはあるものの、審美歯科治療の範疇の中では侵襲の少ない治療法だと考えます。
 元々さし歯が入っているケースや、セラミック・ラミネートベニアクラウンの適応症から外れるケースでは、通常のセラミッククラウンで審美歯科治療を行うことになります。  

 例えばですが、この方のように歯の間に大きな隙間がある方です。
     
とりあえず、コンポジットレジン充填により隙間を埋めて、治療を終えました。
治療後しばらくは良かったのですが、だんだん色の違いや、周囲の変色などが目立ち始めて・・・。
      ・・・
結局、セラミック・ラミネートベニアクラウンにて審美歯科治療を行って、キレイな白い歯にしました。
     
このような2段階の治し方もアリかな、と思います。

3.優先順位を付けてもらい、より気になる所から治すこと

 お口の中に変色などが一杯見える場合、どこから治そうか・・・、全部治したい・・・、と悩むと思います。
予算は通常限られていますから、やはり優先順位を付けて、今回はココを治す、来年はアッチを治す、と考えるべきでしょう。

 人により優先順位は異なると思いますが、審美歯科という治療をしている立場から、一つの考え方を示します。
   ● ニコッと笑った時に左右対称になるように!
   ● 歯とお財布へのダメージが小さい歯から治す!
上記の二つのパターンに引っかかる前歯が、最優先であると考えて、カウンセリングをしています。

 治療にかかる費用を考えると、どうしても審美歯科治療の範囲を抑えがちになります。
しかし中途半端に治療範囲を抑えて、後々でその結果に不満が残るよりは、多少費用がかかってでも思い切ったほうが良いこともあります。  最初のカウンセリングで、そして気になったらいつでも何回でも再相談をして、納得できる治療結果を得られるように患者さん自身も努力してください。

4.より長持ちさせられるような環境を作り・維持すること

 治療前の変色などが目立つ状態からキレイな白い歯になる為には、一度は削ったりなど嫌な過程を辿らなければいけません。  当たり前ですが、この過程は今回だけで済ませるべきもので、年月を経て何回も繰り返すべきものではありません。  そうです、虫歯にならないように守らなければいけないのですね!

 私たち術者サイドから出切ることは、可及的にピッタリと適合するように、確認チェックしながら治療のステップを進めていくことです。  どんなに良い材料や技術を用いても、歯との適合が悪ければどうしようもありません。

 一方、患者さんサイドから出切ることは、治療終了時のお口の状態・環境を維持して行くことです。  大体において、治療終了時のお口の中が一番キレイです。  時が過ぎ喉元過ぎると・・・、段々歯磨きも雑になり、歯垢なども溜まってきて、お口の中が少しずつ不潔になってくるものです。  虫歯の原因になる細菌(ストレプトコッカス・ミュータンス)は元々その人のお口の中にいる口腔内常在菌の一種です。  歯磨きや定期健診などのプラークコントロールが悪いと、そういう悪玉細菌が増えて・・・、治療のやり直しという嫌な道へ進んでしまうのです。

 二人三脚で守っていくことが大事であろうと思います。
審美歯科治療とは直接関係の無い項目ですが、一度キレイにしたお口の中を大事に守って欲しい!と思うと、避けては通れない項目なので記しています。


Copyright (C) 2008 saa-dental clinic. All Rights Reserved

前歯の審美歯科治療の背景となる基本的な事柄について説明しています。