審美歯科 前歯も白い歯 編

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審美歯科の基準 

 前歯の形や色は様々です。  その人その人の個性の表現でもあります。
ただ、 審美歯科 という観点で見るときには、自ずと異なる見方があります。  その人の個性を活かしながら、より審美的な個性の表現を行うことが大切です。

 前歯だけを見て審美歯科治療をしては、十分にキレイに出来ないこともあります。 顔全体を見てその中でバランスを保ち、魅力をより惹き立てる事のできるように、とアプローチすることが大切です。  そういう審美歯科治療をする上で、考え方の背景となる基礎知識を説明しましょう。

顔面の参考線

 顔を観るとき、無意識に幾つかの参考線を引くことにより、判断していきます。顔面における参考線

垂直的には
     顔面の正中線
     歯列の正中線

水平的には
     頭髪の生え際が作る線
     左右の眉毛を結ぶ線
     左右の瞳孔を結ぶ線 ( 瞳孔線 )
     鼻の下で水平に作る線 ( 鼻下点線 )
     左右の口角を結ぶ線
     下口唇が作る線 ( スマイルライン )




顔貌の評価

 まず、瞳孔線と顔面の正中線が作る『 T字 』の左右対称の構図は、美しい顔貌の基本になります。
その上で、 審美歯科 に関して最も重要なことは、口唇が作るスマイルラインが顔面の正中と左右均等に垂直関係にあり、瞳孔線とは水平関係にあるということ! です。
                  顔面と口唇を中心とした参考線の関係

 鼻下点からオトガイ下点までの高さ(咬合高径)は非常に重要です。
顔面高径を3等分した割合の高さを示すことが理想ですが、意外と小さい値を示すことも多いです。  しかし、この高さが足りないと、いわゆる寸詰まりの印象を与えることになります。

 顔面と口唇の関係を評価した上で、
上の前歯の先端(切縁)と奥歯の外側の先端(頬側咬頭頂)を結ぶ仮想線(facial cusp line)を想定して、口唇と歯の関係を評価します。

 @ 上の前歯の切縁は瞳孔線や下口唇と水平関係にあるか?
 A 微笑んだ時に上の前歯の切縁は下口唇が作るスマイルラインに沿っているか?
 B 奥歯に行くに伴って歯の見える状態が漸減しているか?
 C Buccal corridor (微笑んだ時に出来る口角と歯との間の暗く見える空間)が存在するか?
 D 以上の4項目が顔面正中を境に左右対称であるか?
                    口唇と歯との参考線の関係

 顔面の正中線 と 上の歯列の正中線 と 下の歯列の正中線 の3者は一致していることが一つの理想ではあります。  
しかし、一致せずに多少のズレがあっても、三つの正中線が平行であれば、 審美歯科 的に問題になることはありません。

口唇線と歯の関係

 上の前歯(犬歯から犬歯)の切縁を結ぶ線が、スマイルライン(下口唇線)に沿って下に凸なカーブを描くと、より女性的なイメージを強調します。  逆に直線的になるほど男性的なイメージが出てきます。

 口唇と歯の見え具合も大事なポイントです。
談笑中に明るく白い歯がこぼれるように見えるのは、若さと躍動感の象徴であるとイメージされます。  実際に若い人ほど前歯の露出量が多くなる傾向があります。
     ( 若年者で3.37mm  中年者で1.20mm )
また、お口を楽にした状態(安静位)においては、女性の方がよく歯が見える。     ( 女性で3.40mm 男性で1.91mm )

フル・スマイル時の歯および歯肉の見え方により3通りに分類しています。
 ハイ・リップ  :  歯冠が100%露出して、合わせて歯肉も見える
              歯肉が3mm以上見える場合を、特に、ガミー・スマイルという。
 アベレージ・リップ  :  歯冠が75〜100%見える
 ロウ・リップ  :  歯冠が75%以下しか見えない

 笑ったり、談笑したりする時に、上の前歯が左右同じぐらいに露出して見えることも大事です。
人の顔は完全な左右対称ではないため、顎骨や軟組織の成長の具合により必ずしも左右が同じに見えるとは限りません。

 正面から見て、前歯6本の並びが平坦であるのも、審美的に好ましいことではありません。
歯列は水平面で見て、『Uの字』型にカーブを描いているのが自然です。  このカーブが急過ぎても、緩過ぎて平坦でも、不自然なイメージです。
上下の噛み合せに影響されますので、上の並びだけで改善するには限界があります。

歯の形態

 上の正面の前歯(中切歯)は歯列の構成要素の中でもっとも目立つことが大切です。
漫画の歯と異なり、歯の大きさは1本1本違います。  大きさを単純に比較するならば、大きい前歯、小さい前歯、大きい犬歯 と並ぶことになりますが、正面からお口を見て見える歯の大きさで考えるならば、歯列はカーブを描いていますから、そうはなりません。  正面の歯はその全てが見えますが、奥に行くに伴い正中よりの一部(近心側)が見えるようになります。

 審美 的な前歯の見え方は、
     中切歯 : 側切歯 : 犬歯 = 1.618 : 1.0 : 0.618
黄金比を保って、左右対称であることです。
          前歯における黄金比

 前歯の歯軸は、一般に中切歯より犬歯の方が近心傾斜が強く、末広がりにバランスよく並んでいます。
          前歯の歯軸

 そして、犬歯から臼歯(奥歯)にかけての歯軸は、正中線をはさんで線対称となります。  結果として、歯の頬側面(外側の歯面)の傾斜が連続したグラディエーションを示します。
          奥歯の頬側面の傾斜

 歯の形も、丸い感じの歯やら、四角い感じの歯やら、逆三角形の歯やら色々ありますが、一番大事なポイントは、切縁部の形態です。
一般に、近心の隅角は急なカーブで、遠心の隅角は緩いカーブ を採り、切縁全体としてやや遠心上がりになっている方がより 審美 的に良好になります。
年齢を経ると、咬耗により切縁部が磨り減ってしまい平坦になっていきます。
また一般に、四角い歯は男性的なイメージで、丸い歯は女性的なイメージを持っています。
          歯の審美的な形態

歯の色

 天然歯の色調は『オレンジ色』が基本です。
通常、歯科の世界ではオレンジ色をベースにして、歯の色相を4種類に分類します。
 オレンジ (A系統)
 イエローオレンジ (B系統)
 グレーオレンジ (C系統)
 ブラウンオレンジ (D系統)

それぞれの系統ごとに明度を基準として更に分類します。  通常は1〜4の4段階に分けます。

そして、歯の表面の特徴としての白斑、透明部分、縞模様などを彩度と色味と合わせて確認します。

ブラックトライアングル

 ブラックトライアングルとは、前歯の歯間部において同部の歯肉の歯間乳頭が存在せず、三角形の隙間が空いている状態のことを指す。
口腔内においては黒く見えるため、審美的な障害となることが多い。

 原因としては、

  ● 歯根が平行でない
          ⇒ いわゆる歯並びが悪い為、歯冠形態や歯周組織が正常であっても根元に隙間が空いている。

  ● 歯冠形態に問題がある
          ⇒ 一番細い歯の根元から一番広い切縁へ向けて直線的に歯の形態が拡がり三角形状の歯の形をしている。

  ● 歯周組織自体が減少して下がっている
          ⇒ 歯周病などで歯を支える骨や歯肉が下がってしまい、歯根まで露出している。

  ● 隣接面の接触点の位置と形態に問題がある
          ⇒ 歯の隣接の接触点と同部の骨頂の距離が5mm以上ある。

錯覚の利用

 様々な諸条件により、必ずしも理想どおりに歯の形を整えられない場合もあります。  そういう時は、錯覚を利用して 審美 性を追及します。

広く見せたい場合は、唇面を平坦にして辺縁隆線を強調して、明るめの色合いにします。
狭く見せたい場合は、唇面を丸くして辺縁隆線を弱めにして、暗めの色合いにします。
          錯覚の利用 1

長く見せたい場合は、唇面を平坦にして、豊隆部を歯頚部寄りにします。
短く見せたい場合は、唇面を丸くして、豊隆部を切縁寄りにします。
          錯覚の利用 2

歯肉の描くライン

 正面から見た歯肉の見え具合は、
正中線に対し左右対称で、自然なスキャロップ型を描いている、という状態が 審美歯科 的に良好です。
臼歯部から連続していて同じ平面上にあることは、当然ながら大事なことです。
          スキャロップ状の歯肉
左右非対称になっている場合は、歯周形成外科で歯冠を長くするとか、術前矯正を行い歯肉のレベルをそろえるとか、の処置が必要になります。


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前歯の審美歯科治療の背景となる基本的な事柄について説明しています。